おひとりさまに本当に必要な保険とは?おひとりさま専門FPが解説

いろいろな保険 おひとりさま(シングル、独身の人)
おひとりさま(シングル、独身の人)何となく不安な人暮らしとお金

おひとりさま(独身の人・シングル)にはどのような保険が必要でしょうか。

養う家族がいないのだから保険は必要ないという意見がある一方で、何となく不安といった理由で必要以上に保険に頼ってしまうケースもあります。

もし養う家族や財産を残す相手がいないのであれば、亡くなったときの保障は必要ありません。預貯金が十分にあれば、医療保険も必要ないかもしれません。

保険とは、起こる可能性は少ないもののもし起きてしまえば損害が大きいできごとに備えるためのものです。そう考えると、損害保険(個人賠償責任保険)や海外旅行保険には入っておいたほうがよいでしょう。

今回は、おひとりさま専門のFP(ファイナンシャル・プランナー)が、おひとりさまにはどのような保険が必要なのかを解説します。

1.死亡保険は基本的に不要

いる?いらない?の画像

養う家族や財産を残す相手がいないのであれば、おひとりさまは、基本的に死亡保険に加入する必要はありません。

ここでわざわざ「基本的に」と書いたのは、実際には死亡保険にもメリットがあるからです。

おひとりさまが亡くなったときは、家族や周りの人が葬儀代や医療費を支払わなければなりません。亡くなった人の預金でまかなえればいいのですが、相続の手続きが終わるまで預金を引き出せない場合があります。
「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」では、相続人が預金の一部を引き出すことができますが、戸籍謄本などの書類が必要で、しかもその場ですぐに引き出せるわけではありません。

一方死亡保険では、保険金受取人となっている人が請求すれば、1週間以内に保険金が支払われます。
葬儀代や医療費など、亡くなってからすぐに必要なお金をまかなう目的であれば、死亡保険も選択肢の一つになります。

2.病気・ケガは公的な保障と預貯金でカバーできないか確認

病室の画像

おひとりさまにとって、病気・ケガの治療費を保障する「医療保険」や、働けなくなったときに収入を保障する「就業不能保険」が必要かどうかは、人それぞれです。
まずは、公的な保障と預貯金でカバーできるかどうかを確認してみましょう。

2-1.医療費は想像しているほどかからない

大きな病気やケガをしたことがない人は実感がないかもしれませんが、日本の健康保険制度は充実しています。
病院の窓口で払う医療費は、実際の医療費の3割です(現役世代の場合)。「高額療養費制度」では、月々に払う医療費が一定額を超えた場合に後日払い戻しを受けられます(一定額以上払わなくてよい場合もあります)。

病気やケガをしたときにかかる医療費はそれぞれの状況によって異なりますが、多くの場合、数十万円あれば足りると考えられます。

ご自身の預貯金で数十万円の医療費がカバーできそうであれば、保険会社の医療保険に加入する必要はないといってよいでしょう。保険料を支払う代わりに、貯蓄を増やすことをおすすめします。

しかし、預貯金が少なくて心細いという方は、掛け捨てでよいので医療保険に入っておくとよいでしょう。

医療費について「数十万円あれば足りる」とお伝えしましたが、これは、2週間入院して1日あたり1万5,000円かかったとして見積もっています。一般的な入院日数や費用については、下記の項目で詳しく解説しています。

一般的な入院日数・費用はどれぐらい?

健康保険が適用されない治療を受けた場合や、差額ベッド代がかかる個室に長期間入院したような場合は、費用が高額になります。
どのような場合でも数十万円で足りるわけではないので、注意してください。

2-2.「就業不能保険」は働き方で必要の度合いが異なる

就業不能保険(所得補償保険)は、病気・ケガで働けなくなったときに収入を保障するための保険です。

しかし、会社員・公務員であれば「有給休暇」があるほか、健康保険から「傷病手当金」が最長で1年6か月分支給されます(お勤め先によってはもっと長い場合もあります)。おひとりさまであれば、よほどの事情がない限り就業不能保険に加入しなくてもよいでしょう。

一方、自営業・フリーランスには、有給休暇も傷病手当金もありません。働くことができなくなると、収入が途絶えてしまいます。ご自身の蓄えや必要の度合いに応じて、就業不能保険に加入されるとよいでしょう。

よく似た名前の保険として「収入保障保険」がありますが、収入保障保険は、死亡したときに残された家族の生活費を保障するものであり、死亡保険の一種です。

3.個人賠償責任保険・海外旅行保険には入っておきたい

裁判所の画像

はじめにもお伝えしましたが、保険とは、起こる可能性は少ないもののもし起きてしまえば損害が大きいできごとに備えるためのものです。

「起こる可能性は少ないもののもし起きてしまえば損害が大きいできごと」としては、次のようなものがあります。

  • 交通事故
  • 火災
  • 自然災害(地震・台風など)
  • 過失・事故で他人にケガをさせた・損害を与えた
  • 海外旅行中に病気・ケガをした

ここでは、これらのできごとのうち「過失・事故で他人にケガをさせた・損害を与えた」場合と、「海外旅行中に病気・ケガをした」場合の備えについて解説します。

交通事故、火災、自然災害については、多くの人が自動車保険(任意保険)や火災保険に入っているので、今回は取りあげません。

3-1.不注意から生じる賠償責任に備える「個人賠償責任保険」

不注意で他人にケガをさせたり、人のものを壊したりした場合の損害賠償は、時として高額になることがあり、預貯金で備えることには限界があります。

こういった賠償責任に備えるためには、「個人賠償責任保険」への加入をおすすめします。
個人賠償責任保険は、通常、自動車保険や火災保険にオプション(特約)を付ける形で加入します。

おひとりさまに限ったことではありませんが、他人に損害を与えてしまったときの賠償責任への備えはぜひ検討してください。自動車保険や火災保険に加入している場合は、契約内容を確認してみましょう。

3-2.海外旅行保険の加入は必須になりつつある

行き先にもよりますが、海外で病気やケガをすると、日本では考えられないほどの費用がかかります。こういった金銭的な負担に備えるため、「海外旅行保険」への加入は欠かせません。

わざわざ海外旅行保険に入らなくても、クレジットカードについている海外旅行保険でいいのではないかと思われるかもしれません。
しかし、クレジットカードの海外旅行保険は補償額が十分でないことが多いうえ、近年は保険適用の条件が厳しくなる傾向があります。今まで「カードを持っていれば自動的に保険が適用されていた」ものが、「航空券など交通費をカードで決済してはじめて保険が適用される」ように変更されるケースが多くなっています。

このような理由から、クレジットカードがあっても安心できません。クレジットカードの海外旅行保険を使うのであれば、適用の条件を満たすようにしたうえで、補償が足りない部分について海外旅行保険に加入することをおすすめします。

海外旅行保険については、下記の記事もご覧ください。

4.ペット保険は種類・年齢などに応じて検討

診察を受ける犬の画像

ペットを飼っていらっしゃる方は、ペットにかかるお金も心配になるでしょう。

「ペット保険」は、ペット(主に犬、猫)がケガや病気をしたときの治療費を補償します。
人間には国の制度として健康保険制度がありますが、ペットにはありません。ご自身の蓄えやペットの種類・年齢などに応じて、保険の加入を考えてみてもよいでしょう。
ただし、ペットの種類・年齢によって加入条件が異なるうえ、高齢になると継続できない場合があります。

保険商品によっては、ペットが他人にケガをさせたり他人のものを壊したりした場合の損害賠償に備える「ペット賠償責任特約」も付けられます。

5.保険が必要かどうかは損害の大きさで判断

ここまで、おひとりさまにはどのような保険が必要かをご紹介しました。

賠償責任や海外での治療費は損害の度合いが大きいので、できるだけ個人賠償責任保険・海外旅行保険には加入しておくことをおすすめします。一方、死亡保険、医療保険、就業不能保険が必要かどうかは人それぞれで、すべての人にどうしても必要とまではいえません。

保険に入るべきかどうか迷った場合は、「保険とは、起こる可能性は少ないもののもし起きてしまえば損害が大きいできごとに備えるためのもの」ということを思い出してみてください。


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