独立開業してからの道のり~どのように事業を進めていったか~

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前回の、未経験からFP独立開業までの道のり~どうしてFPになろうと思ったか、どうやって勉強したか~では、FPとして開業するまでの道のりとして、おもに資格取得と開業準備のお話をしました。

未経験からFP独立開業までの道のり~どうしてFPになろうと思ったか・どうやって勉強したか~
業歴7年の独立FPが、未経験からFPとして独立開業するまでの道のりをご紹介します。決して模範的な方法ではありませんでしたが、これからFP資格を取りたいと思う方や、どうやったらFPになれるのかを知りたい方の参考になればと思います。

今回はその続編として、独立開業してからどのように事業を進めていったのかをご紹介します。

なお、FPとして最短コースで成功したい方にとって、これからご紹介する内容はまったく参考になりません。

独立開業までの過程と同じく、開業してから私が歩んだ道のりもあまり上手いものではありませんでした。もっと上手に事業を軌道に乗せて成功しているFPは他にたくさんいらっしゃいます。

もし、スローペースでいいから、自分に合った方法で事業を続けていきたいとお考えの方がいらっしゃれば、少しはお役に立てるかもしれません。

1.初仕事はwebコンテンツの執筆

パソコンとペンの画像

2015年3月1日に開業はしましたが、未経験でつても何もない状態ですから当然仕事はありません。

一般的には、開業直後は寝る暇もないぐらい忙しいといいますが、全く逆の状態でした。一日中寝ていても、誰にも何も言われません。

しかし、意気揚々と独立開業した手前、いつまでも寝ているわけにはいきません。
まずは何でも、少しでもいいから実績をつくることを考えました。

注目したのは「クラウドソーシング」でした。
クラウドソーシングとは、インターネット上で不特定多数の依頼者と受注者を結びつけるサービスです。デザインやIT分野の仕事が多いのですが、記事を作成する仕事もあります。

記事作成でいえば、「○○をテーマにした記事がほしい…」という依頼者と、「○○をテーマにした記事が書けます!」という受注者が、クラウドソーシングサイトで結びついて仕事が行われます。

クラウドソーシングでは、FP相談の依頼はほぼないようなので、記事の作成(執筆)の仕事を探すことにしました。

クラウドソーシングサイトの画面とにらめっこする日々を経て、webコンテンツ執筆のお仕事を受注することができました。

会社で勤めていたころから文章を作成する機会が多かったので、書くことは苦ではありませんでした。苦でないどころか、調べながら書くことを楽しんでいたぐらいです。
FPの知識を活かすことができる案件で、よい仕事に恵まれました。

開業するまでは執筆が仕事になるとは思っていなかったので、クラウドソーシングで新しい仕事を見つけられたことは驚きでした。
FPの仕事は相談や講演がメインだと勝手に思っていましたが、執筆にもニーズがあることがわかりました。

世の中ではまだ、webコンテンツの執筆は「実績」として認めてもらえない雰囲気があります。
日本FP協会の継続教育単位の申請や、CFP®認定者検索システムへの掲載で認めてもらえる執筆の実績は、書籍の執筆に限られています。
あくまでも推測ですが、webコンテンツは簡単に公開できて簡単に修正・削除できるのに対して、書籍は厳格に編集や校正が行われて形として残るところに違いがあるのではないかと思います。

2.FPとして相談を受ける

相談の画像
(この写真は当所の実際の相談の様子ではありません)

開業して取り組んだのは執筆業務だけではありません。相談業務にも取り組みました。

2-1.FP相談業務第1号

何とかFP相談を引き受けようとホームページの作成を始めましたが、ホームページができる前に相談第1号を受けることができました。

初めてのお客様は知り合いの方でした。開業挨拶のはがきを送っておいてよかったです。

開業前に、集客のノウハウとして「知人や親戚に開業挨拶のはがきを出すように」ということを教わりました。あまり期待はしていませんでしたが、侮れないものです。

相談者さまは、もともとFP資格に関心を持っておられたようです。
そのころ、マイホームを購入しようかということになり、マネープランは大丈夫か見てほしいというご依頼をいただきました。

まずはお話をお伺いして、プランを3通り作成しました。最終的にそのうちの1つを選んでいただくようご提案しました。
拙い提案だったかもしれませんが、ひとまず安心していただけたようで本当に良かったと思います。

2-2.「くらしとお金のFP相談室」相談員に採用

自分で相談を受けるほか、日本FP協会が実施している「くらしとお金のFP相談室」の相談員にも応募しました。

「くらしとお金のFP相談室」は、東京、大阪など主要都市で定期的に実施している無料FP相談です。毎年東京では15人、大阪では10人程度、相談を受けるFPが募集されています。

開業前に受けたアドバイスでは、「くらしとお金のFP相談室の相談員になって、相談の経験を積みなさい」と教えていただきました。
その教えに従って応募したところ、ありがたいことに採用していただきました。

2016年は「くらしとお金のFP相談室」の補助員として、翌年は相談員として、通算2年間さまざまなご相談をお伺いしました。

「くらしとお金のFP相談室」では貴重な経験ができました。相談を受ける技量が向上しただけでなく、FPどうしの横のつながりもできました。

任期も終わりに近づいた頃、次の年の補助員の採用のお手伝いをさせていただきました。
相談員・補助員に求められる基準は年々上がっているように思います。もし、私がこれから応募したら採用されていたかどうかと心配になるほどです。

原則として「くらしとお金のFP相談室」の相談員になれるのは1回だけです。できるだけ多くの人が経験できるように配慮されています。

3.スタディーグループ(SG)に参加

日本FP協会では、各都道府県の支部単位で、FPどうしで勉強する有志の集まりとして「スタディーグループ(SG)」が運営されています。

私が所属する大阪支部では、登録3年以内の新入会員を対象にしたオリエンテーションがあり、その場でSGの紹介コーナーがありました。
SGごとに特色があって、こういった場で比較検討できるのはありがたかったです。

このほか、日本FP協会の会報「FPジャーナル」やFP協会の支部のホームページも参考にしながら、いくつかのSGに参加しました。

SGに参加することのメリットは、FPどうしの横のつながりができるという点です。
数は多くありませんが、SGで知り合った人とは長いお付き合いをさせていただいています。

SGへの参加はメリットが大きいですが、必ず参加しましょうとまでは言えません。
いくつか、あるいは何回かSGに参加すると、どうしても合わないグループや、合わない人も出てくるでしょう。さまざまな立場の人が集まる以上、こうした「性格の不一致」は避けられません。私はあるときを境に、我慢してまでSGに参加するメリットはないとまで思うようになりました。
読者のみなさまには、無理のない範囲で参加することをおすすめします。

4.1級FP技能士の資格取得・CFP®資格の認定

勉強をする人の画像

開業直後は、まだ取得できていない資格の取得にも努めました。

開業した時点では、私は2級FP技能士とAFP資格(下の表の太字)を取得していました。

国家検定民間資格
1級FP技能士
2級FP技能士
3級FP技能士
CFP®資格
AFP資格

1級FP技能士については、試験が1年に1回しかないことから、試験を待たずに開業しました。

CFP®資格については、試験には合格していたものの、実務経験がないため認定されていませんでした。運転免許でいえば「仮免」のような状態です。

そうした事情から、まずは1級FP技能士を受検し、ある程度実務経験ができてからCFP資格の認定を受けることにしました。

4-1.1級FP技能検定受検

FP技能検定は、日本FP協会と金融財政事情研究会(金財)がそれぞれ実施しています。どちらの団体で受検しても、FP技能士の資格が取得できます。

1級FP技能検定には学科試験と実技試験がありますが、学科試験は金財でしか実施されません。しかも合格率が10%前後とFP資格の試験にしてはかなり難しくなっています。

ところが、CFP®資格の認定を受けているか、CFP資格審査試験に6課目とも合格していると、学科試験は免除されます。
私はCFP試験に合格していたので、実技試験だけ受ければよいということです。

実技試験は、団体ごとに異なる形式で行われます。どちらを受けてもよいのですが、それぞれ向き不向きがあるように思います。

  • 日本FP協会:筆記試験、年1回(9月)実施
  • 金融財政事情研究会:面接(2回の口述試験)、年3回(6月、9月、2月)実施

驚いたことに、金財の実技試験は口述試験です。それまで口述試験というものを受けたことがなかったので、日本FP協会の筆記試験を受けることにしました。
年1回しか受験の機会はありませんが、1回で合格すればよいだけのことです。

これだけ強気になれたのは、2014年以前の合格率が95%ぐらいだったからです。
2016年以降は合格率が低下傾向になり、2018年は71%にまで低下しましたが、2019年以降は95%前後に戻っています。

1級FP技能検定の勉強では、通学・通信などの講座を受けることはしませんでした。実技試験だけに対応した講座がなかったからです。

そのかわり、FP754さまの「FP754の1級FP試験の勉強法」を参考にしました(サイトの利用には条件があります)。

FP754の1級FP試験の勉強法
fp754さんのブログです。最近の記事は「1級FP実技試験の勉強法 2024年度試験対策版(5)」です。

過去の問題を何度も繰り返し解いていけば試験対策になります。

日本FP協会の実技試験には、300字程度の記述式問題があります。主に金融商品販売法、消費者契約法、保険業法などについて要点を問うものです。

私は、CFP試験を受けてから1年も経っていなかったため、試験の1か月前になってようやく過去の問題を解きはじめました。1級の過去問だけでは足りないと思って、2級の過去問もいくつか解いて知識を呼び起こしました。

2015年9月に1級FP技能検定の試験を受け、合格することができました。

4-2.CFP®資格認定

CFP資格は、試験に合格しただけでは認定してもらえません。
資格認定には、以下の条件をすべて満たす必要があります。

  • CFP資格審査試験6課目に合格する
  • CFPエントリー研修を受講して修了する
  • 通算で3年以上の実務経験がある

CFPエントリー研修は、CFP資格審査試験の6課目すべてに合格した人を対象に、年に2回実施されます。

私は、2015年3月15日にCFPエントリー研修を受講しました。(当時は通信研修に加えて集合研修もありましたが、現在は通信研修(eラーニング)で実施されます。)

3年以上の実務経験は、未経験者にとっては何ともハードルが高く、あきらめてしまいそうです。
しかし、金融・保険業界やFP事務所に勤めていなくても、一般企業で福利厚生を担当していたなど、幅広い職種が実務経験として認められます。

さらに、実務経験がなくても、研修を受講して実務経験に代えることができます。1時間の受講が実務経験1か月分に換算されます。

実務経験として認められる研修には、日本FP協会が実施する「プロフェッショナルFP研修」・「レジデンシーコース」と、認定教育機関が実施する「みなし実務研修」があります。研修の受講で実務経験を補うことができるのは、ありがたい制度です。

私は、開業して1年経った頃に実務経験の不足分を研修で補って、2016年8月にCFP資格の認定を受けることができました。

CFP認定者になったことで、日本FP協会の「CFP®認定者検索システム」に登録できるようになりました。

相談できるファイナンシャル・プランナーを探す|日本FP協会
“信頼・安心できるファイナンシャル・プランナー”CFP®を所在地や相談分野などの条件を指定して検索できます。

5.セミナーにはなじめず

セミナー受講の画像

しくじったというか、あまり成果がなかった活動についてもお話ししておきます。

FPであるかどうかを問わず、独立開業した人や、開業しようとしている人に向けて、さまざまなセミナーが開講されています。

私は開業したての頃は時間があり余っていて、方向性に迷っていました。
その中で、次の2つのセミナーを受講しました。

  • 融資コンサルタント
  • セールスコピーライター

セミナーの具体的な名前や内容は伏せておきますが、結果として自分のものにすることはできませんでした。

このほか、FPに向けたセミナーとしては、FPとして成功した人がノウハウを教えてくれる、独立開業プログラムや集客セミナーなどもあります。

これらのセミナーも受講しようかと思いましたが、今日に至るまで受講することはありませんでした。
教わったことを実践できる自信がなかったことが一つ。もう一つは、自分なりの方法で何とかやっていけそうだと思ったからです。

FPとして最短コースで成功したいとお考えの方は、セミナーを受講して先輩のノウハウを吸収することをおすすめします。

しかし、ノウハウを活かすも活かさないも受講した人の心掛け次第です。私には最短コースで成功しようという意欲がありませんでした。

日本FP協会でも、2022年から新たに「プロフェッショナルFP研修 FP実務家養成コース」を開講しました。およそ半年にわたる実務実践型の研修で、本格的にプロの実務家として独立・起業したい人のためのプログラムです。詳しい内容は、日本FP協会の会員向け「Myページ」をご覧ください。
(2024年も実施されます。募集期間は4月4日~5月24日です。)

(2024年3月23日更新)

6.相談と執筆でやっていけるめどが立つ

空を指さす画像

開業したての頃は方向性に迷うこともありましたが、開業3年目になると自分の事業の方向性が決まってきました。

お客様の相談をお受けする「相談業務」と、FPの知識を活用した「執筆業務」の2つの業務でやっていけるめどが立ちました。

相談業務では、事務所のホームページができたことと、日本FP協会の「CFP®認定者検索システム」に掲載されたことで、ご依頼をいただけるようになりました。

私はおもに「シングル(おひとりさま・独身の方)」のご相談をお伺いしているので、相談される方の数が少ないことは否定できません。
ただ、多くのFPがファミリーを対象にしているなか、シングルの方の受け皿になれればと思っているので、この方針は変えません。

執筆業務では、安定してお仕事をいただけるようになりました。署名記事もいくつか書かせていただきました。

最後に夢のない話をしますが、開業してからの年収は会社員時代に遠く及びません。
若いときからの蓄えがあることと、私自身が「シングル(おひとりさま・独身)」であるといった事情から、何とか続けられています。

独立して収入が大きく減ることはある程度覚悟していました。もっと働けばもっと収入が得られるかもしれませんが、それで心身が疲弊してしまってはどうしようもありません。
マイペースで仕事ができている現状にはおおむね満足しています。

7.開業から7年になりました

ここまで、独立FPとして未経験で開業してからの実情をご紹介しました。

資格取得や開業までの経験談はそれなりに流布していますが、開業してからの話はあまり公開されていません。自分なりの方法で事業を始めたい、事業を続けていきたいとお考えの方にとって、私の経験が少しでもお役に立てればと思います。

開業して7年以上FP業務を続けてこられたことにはひとまず安心していますし、さまざまな機会でご依頼をくださった方には本当に感謝しています。

これからは、10年、20年と続けていけるように知識と経験を積み上げてまいります。


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