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エンディングノートとは、自身が亡くなったときや意思表示ができない状態になったときに、自身の希望や各種手続きに必要な情報を伝えるためのノートです。
エンディングノートの記入は、いわば「終活」の一環でもあり、若いうちから書くのは早いと思われるかもしれません。
しかし、エンディングノートが必要になる機会(=亡くなったり病気になったり)は突然やってくるので、特にひとりで暮らす「おひとりさま」は備えておくに越したことはありません。また、エンディングノートの記入が、自分の生活を見直すきっかけになるという効果もあります。
今回は、おひとりさま専門のFP(ファイナンシャル・プランナー)が、実際にエンディングノートに書きこんだ体験をもとに、エンディングノートの書き方をご紹介します。
1.エンディングノートとは
エンディングノートとは、自身が亡くなったときや意思表示ができない状態になったときに備えて、財産の内容や、葬儀の方法の希望、介護についての希望などを書いておくためのノートです。
あなたが亡くなったときに何も書き残されていないと、次のような心配があります。
- 家族や親しい人がどのような葬儀をすればよいか悩んでしまう
- あなたの生前の意思とは違う形で葬儀が行われるかもしれない
- あなたが亡くなったことでどのような手続きが必要なのかがわからない
- 財産を見つけてもらえず、どこかに眠ったままになる可能性もある
- もらえるはずの保険金がもらえないかもしれない
エンディングノートがあると、家族や親しい人はあなたがどのような葬儀を希望していたかを知ることができます。また、遺産相続の手続きがスムーズにでき、財産がどこかに眠ったままになる心配もありません。
エンディングノートが役に立つのは、亡くなったときだけではありません。
認知症になった場合や意識を失うようなケガや病気をした場合に、どのような介護・看護を受けたいか、延命治療が必要かといったことを知ってもらうことができます。
1-1.ひな型を埋めるだけで万が一のときに希望を伝えられる
エンディングノートには決まった様式のようなものはないので、自分でノートを準備して、必要事項を書いていってもよいでしょう。しかし、今はさまざまなエンディングノートが市販されているので、それらを活用することをおすすめします。
市販のエンディングノートには、次のような事項を書くためのひな型があります。
- 財産はどの金融機関にどれだけあるか
- 亡くなったときにその財産を誰にあげたいか(誰に引き継いでほしいか)
- 亡くなったときにどのような手続きが必要か(公共料金、クレジットカードなど)
- 延命治療は必要か
- 亡くなったときに誰に連絡してほしいか
- 葬儀はどのようにしてほしいか
このように、万が一の時に必要になる事項をもれなく簡単に書くことができます。
1-2.遺言書のように法的な効力はない
エンディングノートを書くときに注意が必要なのは、エンディングノートには法的な効力はないということです。
エンディングノートに書いたことが実現するかどうかは、それを見た人の意思に委ねられます。そのため、書いたことが必ず実現されるとは限らないということを知っておく必要があります。
遺産を誰に与えるかについて法的に有効な意思表示をしたい場合は、民法の規定に則った「遺言(遺言書)」を書く必要があります。
2.50歳でエンディングノートを書くのは早いのか
エンディングノートの記入は、人生の終わりに向けて準備する「終活」の一環とされています。そのため、もっと高齢の人がすることであって、50歳で書くのは早いのではないかと思う人もいるでしょう。
しかし、次の2つの理由から、エンディングノートを書くのは50歳でも早くはありません。
- 「万が一」はいつ起こるかわからない
- 自分の生活を見直すきっかけになる
早い人では20代、30代からエンディングノートを書く人もいるそうです。
私も40歳ぐらいからエンディングノートを書き始めました。しかし、10年近く経って、追記と削除を重ねてわかりづらくなった部分がある一方で、鉛筆で下書きをしたままという部分もありました。
先日50歳の誕生日を迎えたのを機に、エンディングノートをきちんと書き直すことにしました。
2-1.「万が一」はいつ起こるかわからない
この10年ぐらい、災害や物騒な事件が増えているように感じられ、「万が一」の事態がいつ起こるかがわからない世の中になっています。
命にかかわることまではなかったとしても、急に病気にかかる可能性もあります。(参考:おひとりさまのFPが急病で入院した話~急な入院への対策もご紹介します~)
そのような場合に備えて、生前の意思や財産の状況を書いたものを残しておくことは重要です。
特におひとりさまは、普段の生活でそういったことを伝える人がいないので、エンディングノートに書き残しておくことは必須といってよいでしょう。
2-2.自分の生活を見直すきっかけになる
エンディングノートに今の自分の状況や今後の希望を書いていくことは、自分の生活を見直すきっかけにもなります。
たとえば、財産の内容を書くのに、書くのが面倒になるほど種類が多かったのであれば、今後整理したほうが良いということがわかります。
また、エンディングノートには介護・看護、終末期医療や葬儀の希望を書く欄もあります。簡単に決められない部分もあるかもしれませんが、今後の生き方を考えるきっかけになるでしょう。
3.エンディングノートに書くこと
それでは、エンディングノートにはどのようなことを書くのか、実際に書いてみた感想も交えてご紹介します。
今回は、コクヨのエンディングノート「もしもの時に役立つノート」に記入しました。
以下の項目は類似する内容をまとめているため、必ずしもノートに記載する順番とは一致していません。あらかじめご了承ください。
3-1.基本情報を書く
はじめに、自分の名前、生年月日、住所、電話番号、勤務先などを記入します。
また、過去の住所や電話番号も記入しておきます。これは、過去の情報で登録された会員登録の解約に役立つかもしれません。
そのほか、必要に応じて健康保険証、運転免許証、パスポートなどに関する情報も記入します。
3-2.財産の内容を書く~保険金についても書いておく
次に預貯金など、財産の内容を記入します。これらの情報は、亡くなったときの遺産相続の手続きに役に立ちます。ローンなどの借入金も遺産相続の対象になるため、漏れのないように記入しましょう。
銀行、証券会社、クレジットカードの情報はひな型に書ききれない場合があるので、パソコンでリストを作成してノートに貼りつけてもよいでしょう。内容が変わったときに、簡単に差し替えることができます。
3-2-1.プラスになる財産(預貯金、不動産など)
預貯金のほか、証券口座、電子マネー、純金積立、ゴルフ会員権、不動産、書画骨董、自動車、貸しているお金など、ありとあらゆる財産をもれなく記入します。
3-2-2.マイナスになる財産(ローン、クレジットカードなど)
住宅ローン、カードローン、クレジットカードなどマイナスになる財産についても記入します。
誰かの借金の保証人になっている場合は、そのことも記入しておきます。
3-2-3.保険(生命保険、医療保険、火災保険など)
生命保険、医療保険、個人年金保険、火災保険、自動車保険など、加入している保険があれば、契約内容や保障(補償)内容を記入します。
亡くなったときに家族が保険金を請求できるほか、火災や盗難に遭ったときなど自分で保険金を請求するときにも役に立ちます。
3-2-4.年金(国民年金、厚生年金、企業年金など)
加入している年金(国民年金、厚生年金、企業年金、確定拠出年金など)についても記入しておきます。家族が遺族年金や死亡一時金を請求するときに役に立ちます。
3-2-5.そのほか大切にしているもの(コレクションなど)
思い出の写真やコレクションなど、あなた自身がこれまで大切にしていたものについても記入します。
捨ててしまっても良いのか、誰かに引き継いでもらうのか、売れば売れるものなのかといったことも書いておくとよいでしょう。
価値の高いものの処分について法的に有効な意思表示をしたい場合は、遺言を作成するようにしましょう。
3-3.自動引落の内容を書く~万が一のときに解約しないと請求が続く
公共料金など自動引き落としが行われているものについて、その内容や引き落とし口座、引き落としの日などを記入します。たとえば、次のようなものがあります。
- 家賃、電気、ガス、水道、電話(携帯・固定)、新聞、NHK、ネットサービスなど
- 習い事、フィットネスジムなど各種会費
- 定期お届け便、定額使い放題サービス(サブスク)など
これらのサービスは解約しないと請求が続くため、万が一のときは速やかに解約する必要があります。ノートを見た人が解約しやすいように、連絡先を書いておくことをおすすめします。
なお、預金から直接引き落としされるのではなく、クレジットカードで決済されているものも記入しておきましょう。
数が多い場合は、パソコンで作成したリストをノートに貼りつけてもよいでしょう。
3-4.スマホ・パソコンについて書く
携帯電話(スマートフォン)の契約状況や、解約時の連絡先を記入します。パソコンがあれば、機種やプロバイダの連絡先などを記入します。
中にある情報が見られるようになっている場合は、その情報をどのようにしてほしいかなど、万が一のときの希望も書いておくとよいでしょう。
3-5.万が一のときに連絡してほしい人を書く
家族の名前、生年月日、住所、電話番号、勤務先などを記入します。
このほか、入院したときや亡くなったときに連絡してほしい人の名前や連絡先、間柄などを記入します。対象になるのは、親族のほか、友人・知人などです。
全員に直接連絡するのではなく、親族、職場、旧友、趣味などのつながりごとに代表者を決めておいて、その人から他の人に連絡してもらうようにできればよいでしょう。
3-6.介護・看護・終末期医療について書く
病気にかかったときのために、アレルギーに関することや普段飲んでいる薬、かかりつけ医などについて記入します。
また、認知症などで意思疎通が難しくなったときに備えて、どのような介護・看護を受けたいか、そのための費用はどこから出すかについても記入します。
終末期医療については、余命の告知を受けたいか、回復の見込みがなくなった場合に延命治療を受けたいかといったことを記入します。
3-7.葬儀・相続について書く
亡くなったときの葬儀、お墓についての希望のほか、遺言書の有無、遺産の相続についての希望を記入します。もし、遺産相続や相続税の申告について相談している専門家がいれば、連絡先を書いておきましょう。
なお、エンディングノートに相続の希望を書いても法的な効力はありません。法的に有効な意思表示をしたい場合は、民法の規定に則った「遺言(遺言書)」を書く必要があります。
3-8.その他に書いておくこと
エンディングノートには、スナップ写真や証明写真の残りなど、写真を何枚か入れておきましょう。遺影として使えるほか、行方不明になった場合の捜索に役立つ場合もあります。
ペットを飼っている人は、入院したときや亡くなったときにペットをどのようにしてほしいかを記入します。かかりつけの動物病院や加入しているペット保険があれば、その内容も書いておくとよいでしょう。
最後に、家族やお世話になった人、大切な人に伝えたいことがあれば書いておきましょう。他の人に見られたくないのであれば、手紙を封筒に入れてノートに挟んでおいてもよいでしょう。
4.市販のエンディングノート3選
ここで、市販されているエンディングノートの中から3種類を選んでご紹介します。それぞれに特徴があるので、ご自身に合いそうなものを選んでください。
- エンディングノート「もしもの時に役立つノート」(コクヨ)
- 一番わかりやすい エンディングノート(リベラル社)
- おひとりさまのはじめてのエンディングノート(主婦の友社)
4-1.エンディングノート「もしもの時に役立つノート」(コクヨ)
このエンディングノートに記入する内容は、前の章でお伝えしたとおりです。万が一のときに必要になると思われる内容は、おおむね網羅されています。
家庭がある人に向けて作られていますが、おひとりさまでも十分活用できます。
CDや写真を入れておくカバーが付属しています。
4-2.一番わかりやすい エンディングノート(リベラル社)
前記の「もしもの時に役立つノート」に比べて記入欄が大きく、年配の方に適しているように思いました。わかりやすくて書きやすいのですが、記入欄が少ないため、物足りない人もいるかもしれません。
生前に見られたくない情報を隠すための「スクラッチシール(コインなどで削る銀色のシール)」が付属しています。
4-3.おひとりさまのはじめてのエンディングノート(主婦の友社)
おひとりさまのために作られたエンディングノートです。
スマホやパソコンなどデジタル遺産についてのひな型が充実している一方、介護や葬儀についての記入は少なめになっています。前記二つのノートに比べると、比較的若い人(現役世代)向けに作られているように思いました。項目ごとに解説があり、読み物としても役に立ちます。
前半でお伝えした「自分の生活を見直すきっかけ」になるように構成されているのも特徴です。
5.書いたエンディングノートはどこに置く?
書いたエンディングノートをどこに置くかも重要です。
せっかく書き残した生前の希望も、見つけてもらえなければ「なかったこと」と同じになってしまいます。
大切にしまっておくよりは、わかりやすいところに置くことをおすすめします。ただし、それでは空き巣に入られたときに財産の所在をすべて知られてしまう恐れがあります。
大切にしまっておいて、家族や親しい人にノートのありかを伝えておくことも一つの方法です。
聞いた話ですが、エンディングノートを冷蔵庫に入れておく人もいるようです。万が一のとき家に入った人は、生ものがないかどうか確認するため必ず冷蔵庫を開けるから、という理由だそうです。
6.無理に全部埋めなくてもいいのでとりあえず書いてみましょう
エンディングノートにはさまざまなことが書けるように、数多くのひな型があります。
しかし、それらを一度にすべて埋める必要はありませんし、実際にできる人も少ないと思います。
終末期の医療や葬儀の希望など、考えるだけで気が重くなる内容もあるかもしれません。希望することがすぐに思いつかない場合もあるでしょう。
エンディングノートの記入が重荷になるようであれば、項目を飛ばすか、日を改めて書くことにすればよいでしょう。
無理に全部埋めなくても構いません。とりあえず書けるところから書く、という考えで始めてみてはいかがでしょうか。