個人事業主・フリーランスとして事業を行うには、銀行の預金口座が必要です。
はじめは個人名義の口座を使ってもよいですが、事業が軌道に乗ってくると何かと不都合が生じてきます。
預金口座の名義には、「○○事務所△△△△(名前)」のように、屋号を入れることができます。
しかし「口座開設の手続きが難しいのでは?」とか、「個人では屋号のついた預金口座が作れないのでは?」と心配になっている方もいらっしゃるかもしれません。
今回は、個人事業主・フリーランスが屋号付き口座を開設できる銀行をご紹介します。これから事業を始める方や、事業が軌道に乗ってきて屋号付き口座の開設をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
1.屋号とは
屋号とは、個人事業主やフリーランスが、個人名(本名)とは別に事業で使う名称のことです。
「○○事務所」、「オフィス○○」、「○○屋」のような、事務所や店舗の名前を使うことが一般的です。
2.なぜ屋号付き口座が必要なのか?
個人事業主・フリーランスが必ず屋号付き口座を使わなければならない、ということはありません。はじめは個人名義の口座を使ってもよいでしょう。
しかし、開業してからしばらくすると、次のような不都合が生じてきます。
- 事業の入出金と私用の入出金が混ざって、資金管理や帳簿付けが面倒になる。
- 税務申告を税理士に依頼する場合に、私用の入出金まで見られてしまう。
- 振込先の口座名義が個人名だけだと、取引先や顧客が不安になる。
これらの不都合を解消するには、個人用と事業用で口座を区別し、事業用に屋号付き口座を使います。
記帳や公私の区別といった問題は「個人名義の口座をもう一つ作って事業用にする」という方法でも解決できるかもしれません。しかし、信用を得るためには、屋号付き口座がある方がよいでしょう。
3.屋号付き口座の開設はネット銀行が便利
このあと、個人事業主・フリーランスが屋号付き口座を開設できる銀行をご紹介しますが、いずれもネット銀行(インターネット専業銀行)です。
ネット銀行では、口座開設の手続きをすべてインターネットで行います。平日の日中に銀行に行かなくても、口座開設ができます。
都市銀行や地方銀行、信用金庫など従来の金融機関でも、多くは屋号付き口座の開設ができますが、金融機関の本支店で申し込みをする必要があり、開設までに時間がかかることが多いです。
融資を受けて事業を拡大したい場合や、地域に密着した事業を行う場合には、都市銀行や地域の金融機関と取引する利点は大きいです。しかし、そのような予定がないのであれば、簡単な手続きですぐに屋号付き口座が開設できるネット銀行をおすすめします。
4.個人事業主・フリーランスが屋号付き口座を開設できるネット銀行
これから、個人事業主・フリーランスが屋号付き口座を開設できるネット銀行を3つご紹介します。
- GMOあおぞらネット銀行
- PayPay銀行
- 楽天銀行
これらの銀行では、ネットまたは郵送で口座開設の手続きができます。
4-1.GMOあおぞらネット銀行
GMOあおぞらネット銀行は、あおぞら銀行とGMOインターネットグループが提携して2018年7月に開業したネット銀行です。
GMOあおぞらネット銀行の個人事業主口座の特徴は、次のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
口座開設方法 | 個人口座開設後、個人事業主口座を開設 |
必要書類 | 【個人口座開設】 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど) 【個人事業主口座開設】 ・個人事業主の確認書類(個人事業開業届出書、青色申告承認申請書、確定申告書など) ・事業内容確認書類(ホームページのURL、パンフレット・チラシなど) |
口座開設までの期間 | 個人口座は最短当日 個人事業主口座は、審査完了後最短2営業日後にログイン情報発送。ログイン情報受取後に利用可能 |
口座名義 | 個人名、個人名+屋号、屋号+個人名のいずれか |
振込手数料 | 同行宛:無料 他行宛:145円(消費税込) |
振込サービス | 一括振込、総合振込 |
カード | デビットカード機能つきキャッシュカード(VISA、Mastercard) 新規発行手数料・年会費なし (デビットカードは利用額に応じたキャッシュバックあり) |
利用できるATM (入出金・残高照会) | セブン銀行、イオン銀行、ゆうちょ銀行 |
ATM入出金手数料 | 入金・出金ともに1回110円(消費税込) |
その他の特徴 | 振込入金口座・使い分け口座設定可能 ポイントサービス |
GMOあおぞらネット銀行では、まず個人口座を開設して、そのあと個人事業主口座を開設することができます。
振込入金が多い場合は、振込入金口座・使い分け口座を使うと入金管理の手間が軽減されます。
一方、ATMの入出金に手数料がかかるほか、他の銀行に比べてATMの提携金融機関が少ないため、現金の出し入れが多い場合は不便に感じるかもしれません。
4-2.PayPay銀行
PayPay銀行は、日本で初めてのネット銀行として2000年10月に開業しました(当初はジャパンネット銀行。2021年4月にPayPay銀行に変更)。
PayPay銀行の個人事業主口座の特徴は、次のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
口座開設方法 | 個人事業主口座単独で開設可能 |
必要書類 | ・本人確認資料(運転免許証、マイナンバーカードなど) ・事業実態確認資料(個人事業開業届出書、営業許可証、確定申告書、課税証明書のいずれか) |
口座開設までの期間 | 最短当日~7日程度 |
口座名義 | 屋号+個人名 |
振込手数料 | 同行宛:55円(消費税込) 他行宛:160円(消費税込) |
振込サービス | 一括振込、総合振込 |
カード | デビットカード機能つきキャッシュカード(VISA) 新規発行手数料・年会費なし |
利用できるATM (入出金・残高照会) | セブン銀行、イオン銀行、ローソン銀行、イーネット、ゆうちょ銀行、三井住友銀行 |
ATM入出金手数料 | 入金・出金ともに毎月最初の1回は無料 2回目からは1回165円(消費税込)(ゆうちょ銀行は1回330円(消費税込)) 入出金が3万円以上なら無料 |
その他の特徴 | ビジネスローン利用可能(最大1,000万円、借入・返済はネットで完結) |
PayPay銀行では、個人事業主口座を単独で開設することができます。最短で、申し込んだその日のうちに屋号付き口座が利用できるようになります。
ビジネスローンが利用できるのは、他の2つのネット銀行にないポイントです。事業資金であれば、資金の使途は問われません。
4-3.楽天銀行
楽天銀行は、2001年7月に開業したネット銀行です(当初はイーバンク銀行。2010年5月に楽天銀行に変更)。
楽天銀行の個人ビジネス口座(個人事業主口座)の特徴は、次のとおりです。
項目 | 内容 |
---|---|
口座開設方法 | 個人口座開設後、個人ビジネス口座を開設 |
必要書類 | 【個人口座開設】 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど) 【個人ビジネス口座開設】 個人事業開業届出書または個人事業開始申告書(郵送で提出) |
口座開設までの期間 | 個人口座は最短翌営業日 個人ビジネス口座は1~2週間程度 |
口座名義 | 個人名、個人名+屋号、屋号+個人名のいずれか |
振込手数料 | 同行宛:52円(消費税込) 他行宛:3万円未満150円(消費税込)、3万円以上229円(消費税込) |
振込サービス | 一括振込、総合振込 |
カード | カードは別途申し込み ・キャッシュカード:発行手数料1,100円(消費税込)・年会費なし ・デビットカード(JCB):新規発行手数料なし・年会費1,100円(消費税込) (デビットカードは利用額に応じたキャッシュバックあり) |
利用できるATM (入出金・残高照会) | セブン銀行、イオン銀行、PatSat(パッとサッと)、イーネット、ローソン銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行、ゆうちょ銀行、VIEW ALTTE(ビューアルッテ(入金不可)) ※デビットカードはATM利用不可 |
ATM入出金手数料 | 入金・出金ともに1回220円(消費税込)または275円(消費税込) (提携金融機関により異なる) |
その他の特徴 | インバウンド決済サービス(アジア各国のスマホ決済サービス) |
楽天銀行でも、まず個人口座を開設してから、個人事業主口座を開設する流れになります。
他の銀行に比べてATMの提携金融機関は多いですが、キャッシュカードの発行に手数料がかかります。デビットカードも発行できますが、年会費がかかるうえ、キャッシュカードの機能はなくATMは利用できません。他の2つのネット銀行に比べて振込手数料やATM手数料が高い点にも注意が必要です。
5.まとめ
ここまで、個人事業主・フリーランスが屋号付き口座を開設できるネット銀行を3つご紹介しました。
それぞれの銀行に特色があるので、ご自身のニーズに合った銀行を選ぶとよいでしょう。たとえば、次のような例が挙げられます。
- すぐに屋号付き口座を使いたい場合…PayPay銀行
- 入金管理を効率化したい場合…GMOあおぞらネット銀行
- ATMで現金の出し入れが多い場合…PayPay銀行
- ビジネスローンを利用したい場合…PayPay銀行
- 楽天市場に出店している場合…楽天銀行
屋号付き口座があると、事業と私用の支出が区別できるほか、取引先から信用されやすいというメリットがあります。まだ屋号付き口座がないという方は、この機会にぜひ検討してみてください。